トラブル注意!似ているようで全く違う 多層メッキと合金メッキと複合メッキ

銅メッキ、金メッキ、スズメッキ

多層メッキ、合金メッキ、複合メッキによるトラブル

多層メッキ、合金メッキ、複合メッキについて正しく使われていますでしょうか。多層メッキ、合金メッキ、複合メッキは、その技術内容から、いつの間にかできた業界表現です。ですから、他業種の方が正しく理解されていなくても何ら不思議なことではありません。

しかし、間違った使い方をしたままでよいかというと、そうではありません。間違った言葉を使用してしまうと、メッキ業者との打ち合わせの際に齟齬が生じてしまい、トラブルの原因となってしまいます。最悪の場合、製作した品物が不良品となってしまう恐れがあります。

例えば、“銅とスズの多層メッキ”と“銅とスズの合金メッキ”では外観や機能性など、様々な面で全く違う仕上がりになってしまいます。

ここでは多層メッキ、合金メッキ、複合メッキの違いと、特長について詳しく解説します。

多層メッキ、合金メッキ、複合メッキの違いとその特長

1. 多層メッキ

  • 概要: 異なる種類の金属を、複数層重ねてメッキする方法です。マルチレイヤーで構成された、それぞれのレイヤー(層)が異なる役割を持ち、最終的な製品に特定の機能や特性を付与することを目的としています。最表面は最後にメッキ処理した金属になります。
  • 特徴:
    • 機能分担: 各メッキ層が、下地調整、耐食性向上、装飾性付与など、異なる役割を担います。
    • 段階的な処理: メッキ層の層数と同じ回数以上のメッキ処理が行われます。
  • 例:
    • 自動車部品の装飾クロムメッキ(ニッケルメッキ+クロムメッキなど)
    • 電子部品の耐食性向上メッキ(銅メッキ+ニッケルメッキ+金メッキなど)

2. 合金メッキ

  • 概要: 2種類以上の金属を同時に析出させて、合金のメッキ層を形成する方法です。合金はアロイと呼ばれ、単一の金属メッキでは得られない特性を持つメッキ層を作ることができます。
  • 特徴:
    • 組成制御: メッキ浴の組成や条件を調整することで、合金の組成を制御することが出来る場合があります。
    • 特性向上: 単一金属では得られない硬度、耐食性、電気特性などを付与することができます。
    • 均一な組織: 形成されるメッキ層は、均一な合金組織を持ちます。
  • 例:
    • 黄銅メッキ(銅と亜鉛の合金メッキ)
    • すず-ニッケルメッキ(耐食性、耐変色性に優れる)

3. 複合メッキ

  • 概要: 金属のメッキ層の中に、微細な粒子(金属または非金属)を分散させて共析させる方法です。コンポジットメッキとも呼ばれ、メッキ層に新たな機能や特性を付与することを目的としています。
  • 特徴:
    • 粒子分散: メッキ浴中に懸濁させた微粒子が、金属と共に析出します。
    • 特性付与: 分散させる粒子によって、硬度向上、耐摩耗性向上、潤滑性付与など、様々な特性を付与できます。
    • 応用範囲: 機械部品、電子部品、装飾品など、幅広い分野で利用されています。
  • 例:
    • ニッケル-PTFE複合メッキ(潤滑性、耐摩耗性に優れる)
    • クロム-炭化ケイ素複合メッキ(高硬度、耐摩耗性に優れる)
    • ニッケル-ダイヤモンド複合メッキ(耐摩耗性に優れる)

まとめ|多層メッキ・合金メッキ・複合メッキを正しく使い分けよう

多層メッキ、合金メッキ、複合メッキは、それぞれ構造や特性、用途が大きく異なるメッキ技術です。似たような名称でも、仕上がりや機能性に大きな違いが出るため、正しい用語理解と使い分けが非常に重要です。

誤った表現を使ってしまうと、メッキ業者とのコミュニケーションに齟齬が生まれ、製品不良やトラブルの原因となることもあります。

製品に求められる機能や目的を明確にし、適切なメッキ方法を選ぶことが、品質向上とコスト削減のカギになります。

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