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多層メッキは、単層のメッキだけでは得られない外観、装飾、耐食性、はんだ付け性、金属同士の拡散抑制などの様々な機能性を得ることが出来ます。この様々な機能性は特性を異なった金属をメッキとして組み合わせ多層化する事によって、得ることができます。
例えば、装飾用クロムメッキに、下地ニッケル二層メッキ、又は、下地ニッケル三層メッキを用いることで、装飾性を付加した上で、耐食性を向上させることは可能になります。
一例として、使用するニッケルメッキの種類は、光沢ニッケル・半光沢ニッケル・無光沢ニッケルなどです。この3種類のニッケルメッキの腐食速度は、無光沢ニッケル < 半光沢ニッケル < 光沢ニッケルの順に溶けやすくなります。この溶解メカニズムとしては、使用する各ニッケルメッキ中のイオウ含有量を、組み合わせる事で局部電池作用をコントロールし、腐食速度を変更することが可能です。
下地ニッケル二層メッキは、下層にイオウ無含有の無光沢ニッケルメッキ又は、イオウ含有量の少ない半光沢ニッケルメッキ・上層にイオウ含有量の多い光沢ニッケルメッキを施します。このとき自然電極電位は、無光沢ニッケル、半光沢ニッケルが貴な金属になり、光沢ニッケルが卑な金属になる事で、無光沢ニッケル、半光沢ニッケルはカソードになり、光沢ニッケルはアノードになる為、自然電極電位差の影響で光沢ニッケルが腐食し始め無光沢ニッケル、半光沢ニッケルは腐食しにくい状態になります
又、この時のメッキ膜厚は、無光沢ニッケル、半光沢ニッケルが12~18μm・光沢ニッケルは8~12μmになり、基本6対4の割合で膜厚を調整する事が良いとされています。
下地ニッケル三層メッキは、下層と上層の間に中間層を設け、約1~2μmのイオウ含有量が高い(0.1~0.2%)トリニッケルメッキを用いることで、上層から中間層へ腐食が到達しても、トリニッケルメッキの表面を横方向に広がる為、更に耐食性は向上されることになり素地自体の腐食を抑えることが可能になります。
一方の単層メッキの長所としては、多層メッキと比較し処理工程工数が少ない事でコスト削減につながることです。短所としては素地の種類とメッキの種類の組み合わせにより、金属間で拡散作用が働き著しく、多層メッキと比較して耐食性が劣ることになります。
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