金属腐食の真実!イオン化傾向だけでは不十分な理由

イオン化傾向より、本当はもっと安定な金属
金属の腐食について、単体金属の安定性をイオン化傾向で考えることは間違っていません。しかしながら、実際の使用環境においては、イオン化傾向だけでは正しい判断が出来ない場合があります。金属によっては、イオン化傾向で示される順列より遥かに化学的安定性の高い金属があります。
例としてはアルミニウムです。アルミニウムはイオン化傾向の順列において、比較的大きい(イオンになり易い)金属とされています。しかし実際には、窓のアルミサッシやフェンスなど屋外環境でも利用されています。
他にもニッケルやチタン、クロム、モリブデンなどもイオン化傾向に比べ、化学的に安定な金属です。また、ステンレスなどの合金も非常に安定な金属です。
なぜ、これらの金属がイオン化傾向の順列に比べて化学的に安定なのでしょうか。
イオン化傾向より化学的に安定な理由
上記の金属がイオン化傾向に比べて安定な理由は、金属表面に不動態皮膜と呼ばれる皮膜を形成し易いからです。不動態皮膜には以下のような特徴があります。
- 不動態皮膜は金属の表面に形成される緻密で安定な酸化物の一種です。
- 不動態皮膜は、非常に薄く透明であるため、見た目には変化がありません。
- 不動態皮膜は、金属を外部環境から隔離し、腐食反応を抑制するバリアの役割を果たします。
- 不動態皮膜は生成速度が非常に早く、たとえ皮膜が破壊されても再度生成します。
但し、使用環境によっては不動態皮膜が溶解してしまうことがあります。不動態皮膜が無くなってしまうと、イオン化傾向の通りの活性な状態となり、腐食が起こり易い状態となります。
不動態皮膜がメッキへ与える影響
不動態皮膜は金属腐食を抑制する非常に優れた性質を持っていますが、メッキとの密着性を阻害してしまうという側面があります。
不動態皮膜を形成し易い金属は、メッキ難素材と言われています。メッキを施す際には適切なメッキ前処理によって、不動態皮膜を除去した状態でメッキ処理する必要があります。
まとめ
イオン化傾向は、金属がどれだけ溶けやすいか(腐食し易いか)を示す指標として有効です。しかしながら、金属の種類によっては、イオン化傾向だけでなく、金属表面に形成される不動態皮膜の存在が金属腐食に大きな影響を与えます。
不動態皮膜は、金属の腐食を防ぐ上で非常に重要な役割を果たしています。不動態皮膜の特性を理解することは、金属材料の選択や腐食防止対策を考える上で不可欠です。
また、不動態皮膜が形成されやすい金属はメッキ難素材とも呼ばれており、不動態皮膜がメッキ密着性を阻害してしまいます。メッキ処理を行う前には適切な前処理を行う必要があります。
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第76回 アルミニウムの表面硬度を驚異の25倍以上にする技術
アルミニウムの硬度は純アルミと呼ばれるA1050やA1100でビッカース硬度30Hv程度と言われています。また、アルミニウムの表面処理の一つである硬質アルマイト処理では、表面硬度が450Hv~500Hv程度になると言われています。これでも純アルミの15倍以上の硬度となり十分に硬いのですが、今回ご紹介する方法では更に硬い、25倍以上の硬度になります。