スズ合金メッキの種類と特長

合金メッキとは

 

合金メッキは2種類以上の金属を同時に析出させたメッキのことです。

合金メッキは単一金属では得られない耐食性や耐摩耗性、色調、展性、磁性、ハンダ付け性、硬度、融点などの機能を得ることができます。

また、単一金属では欠けている機能をもう一方の金属が補ってくれる特徴があります。通常、合金を得る為にはそれぞれの金属を加熱混合することで合金を得ることができます。

しかしながら高融点の金属を溶かす為には多くのエネルギーが必要になります。

一方、メッキでは溶液中の各金属イオンを金属として析出させる方法で合金をつくる為、比較的少ないエネルギーで合金を得ることができます。

合金メッキの特徴として、溶製には出来ない相構造の金属を得ることができます。

例えば、平衡状態図には無い過飽和固容体が形成されたり、平衡状態図とは異なる層が形成されたり、非晶質相が形成されるなどが挙げられます。

合金メッキは単独では析出しないリン(P)やタングステン(W)、モリブデン(Mo)などを共析させることが出来る為、製品に新たな機能を付与することが出来ます。

 

合金メッキにも多種多様なものがありますが、今回はスズ合金メッキに絞ってご紹介します。

スズは銀白色で柔らかく、展性の大きい金属であり融点が低いことから、多くの種類の合金メッキが存在します。

例えば銅(Cu)や鉛(Pb)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、コバルト(Co)などとの合金あり、その合金比率もさまざまです。

スズやスズ合金メッキは、はんだ付け性や金属アレルギー対策などに利用されており、リチウムイオン電池の新しい材料としても注目されています。

はんだに利用されるスズ系合金メッキには様々ありますが、いずれも一長一短あり、2次加工や組み立ての方法など製品によって使い分けられています。

 

 

下記に代表的なスズ合金メッキの種類と特徴を記載します。

 

スズ-鉛合金メッキ Sn-Pb

 

はんだメッキとも呼ばれ、融点が低くはんだ付け性に優れています。ウィスカも発生し辛い為、電気・電子部品のプリント配線板へのメッキにスズ90%鉛10%や、スズ60%鉛40%などの比率で使用されてきました。しかしながらRoHS規制により鉛フリーのスズメッキへと代替が進んでいます。

スズ-銅合金メッキ Sn-Cu

 

はんだメッキ代替合金メッキの一つとして利用されています。スズ含有率の違いにより色調も変化します。スズ10%程度では青銅(ブロンズ)メッキ、スズ40%、銅60%の合金メッキはスペキュラム合金メッキと呼ばれます。スペキュラム合金は銀白色のメッキでニッケルメッキに色調が似ている為、金属アレルギー対策としてメガネやネックレス、ボタン等のアクセサリーとしても利用されています。

スズ-銀合金メッキ Sn-Ag

 

はんだメッキ代替合金の一つとして利用されています。電気伝導性、摺動性、耐摩耗性が高い為、抜き差しの頻度が高い、コネクタや端子などのメッキに向いています。

スズ-ビスマス合金メッキ Sn-Bi

 

はんだメッキ代替合金の一つとして利用されています。スズ単体のメッキに比べてビスマスを共析した場合、スズの再結晶化を抑制することが出来る為、結果的にウィスカを抑制することが出来ます。スズ-ビスマス合金メッキは、半導体・リードフレームなどのメッキに使用されています。

スズ-インジウム合金メッキ Sn-In

 

スズ・インジウム共に非常に柔らかい金属で、それぞれの金属の融点が231℃、156℃と金属の中では低い温度で溶けます。その合金であるスズ-インジウム合金の融点は更に低くなります。その為、はんだ付けに向いています。

スズ-亜鉛合金メッキ Sn-Zn

 

銀白色のメッキで、スズに亜鉛15~30%の合金が一般的です。耐食性が高く、ハンダ付け性も良好です。展延性が高いので折り曲げや、カシメなどメッキ後に2次加工を行っても、割れたり剥がれたりすることがありません。

スズ-コバルト合金メッキ Sn-Co

 

クロムメッキに色調が似ており、クロムメッキほどではありませんが比較的硬質の被膜ですので、クロムメッキの代替としてメガネなどの装飾品に使用されています。クロムメッキはメッキ処理の際に高い電流密度が必要な為、ラックなどでの処理が必須になります。一方でスズ-コバルト合金メッキは均一電着性に優れているので、低電流密度でメッキが可能である為、バレルによるメッキ処理をすることができます。

スズ-ニッケル合金 Sn-Ni

 

耐食性・耐摩耗性が高く、はんだ付け性に優れています。基本的には銀色をしていますが、黒色にすることもできます。

 

その他

 

ご紹介したのもは2元合金メッキですが、スズ-銅-亜鉛(Sn-Cu-Zn)やスズ-銅-銀(Sn-Cu-Ag)などの3元合金メッキなども開発されています。

各合金メッキの合金比率はメッキ業者様が保有されている処理液に依存します。基本的に1つの処理液からは概ね決まった合金比率のメッキ被膜ができます。

違う合金比率のメッキ被膜が必要な場合、新たに処理液を作る必要があります。

 

スズ、スズ合金メッキについてはメッキ.comまで、お問い合わせください。